1.初めに
保証契約は「司法試験 平成25年」にも出題されています。
紛争類型別にも書かれている基礎ですが、実際に表現するとなると意外に書けていない答案が目につきます。
司法試験・予備試験でも重要ですので、一つひとつ丁寧に見てみましょう。
2、保証の要件事実
要件事実としては
① 主債務の発生原因事実、②保証契約の締結、③保証契約が書面でされたこと、です(民法446条1項)。
① 主債務の発生原因事実
保証債務は、主債務が履行されない場合に、これを履行することによって債権者に主債務が履行されたのと同一の利益を与えようとするものです (民法446条1項) 。
上記の保証債務の付従性から、保証債務は主債務の存在を前提とします。
原告が保証債務の履行を請求する場合、その請求原因として、主債務の発生原因事実たる事実(EX. 売買契約の締結など)を主張する必要があります。
ちなみに、主債務たる売買契約に付された支払期限の合意まで主張する必要はありません。
理由として、売買契約を締結した売主は、契約締結後直ちに代金の支払を請求できるのが原則であるため、支払期限の合意があることは、相手方が主張責任を負う抗弁となるからです。
② 保証契約の成立
保証債務の履行を求める場合、保証契約の成立の主張が必要となります。
また、保証人に遅延損害金の請求をする場合ですが これを保証契約の成立とは別に主張する必要はありません。
理由として、保証債務は、特約がない限り、その対象として主債務に関する遅延損害金を含まれ(447条1項) 、保証契約に基づいて元本及び遅延損害金を請求する場合には,これらは保証契約に基づく保証債務履行請求権に包含されるからです。
③ 保証契約が書面によってされたこと
446条2項により、上記の主張が必要となります。
次に,保証債務の履行を求める場面であるため,以下の各事実を主張することも必要です。
(1)物の引渡し
原告は連帯保証人に対して遅延損害金の支払も請求する場合、その要件として遅滞に陥っていることが必要となります。
この点に関して、同時履行の抗弁権(533条)の存在は履行遅滞の違法性阻却事由に当たると解されています。
そのため保証人は、主債務者が有する同時履行の抗弁権を援用することができます。
そして、主債務の発生原因を売買契約(555条)とした場合、双務契約であることから、売買契約締結の事実を主張することによって代金支払債務に同時履行の抗弁が付着していることが明らかとなります。
そのため、原告が遅延損害金の支払請求をするためには,同時履行の抗弁権の存在効果を消滅させる必要があり,売買契約に基づいて物を引き渡したことを主張しなければなりません。
(2)弁済期の経過
Xが連帯保証人に対して遅延損害金の支払も請求するとき、遅延損害金は,債務者が支払期限を徒過したことによって発生した損害金ですので、支払期限の到来ではなく経過まで主張する必要があります。
以上に加えて、その保証が「連帯保証である旨の特約の存在」も主張する必要があります。
確かに、連帯の約定は、催告・検索の抗弁 (452条, 453条) に対する再抗に位置付けられ、本来は、連帯の約定を債権者が請求原因として主張する要はありません。
もっとも、同一訴訟手続内において、原告が複数の連帯保証人に保証債務全額を請求する場合、請求原因の段階で共同保証人の存在が現れてしまいます(456条、427条) 。
そのため、連帯の特約等、共同保証人の各保証債務が連帯保証債務となるべき事実を証明しない限り、請求の一部が主張自体失当となることから、債権者は、当該事実を請求原因の段階で主張しなければならないことになります。
3、最後に
以上が保証債務履行請求の場合の基本的な要件事実の理解になります。
一つひとつの理屈を理解し、何度も論理を追っていただくと上記の思考が身につくと思います。
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