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1 はじめに

皆さん、こんにちは!

司法試験講師の宮崎です。

以前、作成した「司法試験選択科目ランキング」が例年大好評でした。

この度、Webサイトのリニューアルに伴い、
最新の令和元年・平成31年の「受験者数」を考慮し、どの科目が受験生の皆さまにとって「総合的に有益か?」の観点から考察してみました。

昨今の感染症(2020年現在)の問題では、日本の産業・経済への今後数年の痛打は避けられそうにありません。

その点も考慮し、司法試験選択科目ランキングを発表します。
※なお、本ランキングは筆者の独断と偏見になりますのでご理解の程宜しくお願い致します。

科目名 令和元年受験者数 平成30年受験者数
倒 産 法  608人(13.7%) 758人(14.6%)
租 税 法 329人( 7.4%) 358人( 6.9%)
経 済 法 789人(17.8%) 848人(16.3%)
知的財産法 597人(13.5%)   714人(13.7%)
労 働 法 1,299人(29.3%) 1,481人(28.5%)
環 境 法 256人( 5.8%) 305人( 5.9%)
国際関係法(公法系) 59人( 1.3%) 64人( 1.2%)
国際関係法(私法系) 492人(11.1%) 672人(12.9%)

2 選択科目ランキングの判断基準

①参考書・対策本等が充実しているか
②学習の範囲の広狭と学習量の軽重
③将来の仕事での有用性
④選択者の人数の4つの考慮要素によって

「5つ星」(③は今後の日本経済での関係でも重要な視点であることから6つ星にしました)で判断しております。

3 各科目の評価と比較

(1)倒産法  ★14個

①参考書・対策本等が充実しているか ★★★★

②学習の範囲の広狭と学習量の軽重 ★★

③将来の仕事での有用性 ★★★★★

④選択者の人数 ★★★ (令和元年は3位)

①基本書や演習書、講座も豊富であることから独学でも学びやすい科目といえます。

②倒産法は、破産法,民事再生法の分野から出題されており、かなりの学習量が要求されます。とはいえ、民法,民事訴訟法といった民事系の科目との関連性が高いことから、倒産法、民事系の学習の相乗効果が期待できます。他方、民法・民事訴訟法が優秀な受験者と戦わなければならないため、相対的に高得点を取ることが難しいといえます。

③現在の感染症問題により、残念ながら今後の破産・倒産件数が増加することが予測できます。そのため、契約ではその予防条項の挿入など弁護士の役割が大きいといえます。毎年の破産件数は多く、高額な金額の動く倒産案件も多いです。

④令和元年は608人(13.7%)の受験生が選択しており,受験仲間との情報共有がしやすいといえます。

(2)租税法 ★16個

①参考書・対策本等が充実しているか ★★★

②学習の範囲の広狭と学習量の軽重 ★★★★★

③将来の仕事での有用性 ★★★★★★

④選択者の人数 ★★ (令和元年は6位)

①基本書や演習書、講座も充実しているとはいえず、他の科目に比べて独学では学習がしづらい科目です。

②司法試験における租税法は、所得税法、法人税法及び国税通則法を含んでおり、実体法だけでなく手続法もあるため、勉強量が多いようにも思われます。しかし、司法試験考査委員の出題の趣旨にあるように所得税法がメインです。

そのことから、「所得税法」のマスターが租税法を制することになり、必然的に学習範囲を絞れることになります。

そして、その所得税法の中でも「所得分類」(ex.その所得が事業所得、雑所得、給与所得のいずれに分類できるか)の出題は過去の司法試験でも頻出になります。覚える事項は比較的少なく学習量は多くありません。判例の言い回しを正確に記憶・理解すれば,十分に合格答案を作成できます。

また、簿記や会計の知識は必須ではなく、「足し算・引き算・掛け算・割り算」ができれば計算は十分です。

③企業の関心は、財務と税務に集約されます。企業の企画立案、税務コンサル、IPO(株式上場)支援、M&A等、幅広い金融に関わることもできます。

近時、法曹も法律のプロとしてだけではなく、「数字、経営」のアドバイザーとしての活躍の場が広がっており、目指す方が増えています。実はTAX(税金)の理解は事務所経営、訴訟にも関わってきます。

そして、司法試験合格は、公認会計士試験の一部免除要件に繋がり、最小限の労力で「公認会計士試験合格」を果たすことが可能になります。

その際に、司法試験選択科目で「租税法」の理解をしていることは大きな武器になることは間違いありません。税理士登録をする際にも、名ばかり「税理士」ではない活躍が期待でき実務上は極めて重要です。

④租税法は例年、全体の約7%(令和元年は6位)が受験する科目です。ですので、受験仲間との情報共有がしやすいとはいえません。

→ 租税法の講座はこちらから


(3)経済法★13個

①参考書・対策本等が充実しているか ★★★

②学習の範囲の広狭と学習量の軽重 ★★★★

③将来の仕事での有用性 ★★

④選択者の人数 ★★★★ (令和元年は2位)

①独占禁止法が主な問題になります。材や講座が豊富とはいえません。もっとも、教材は基本書と判例百選,ケースブックで対応可能な科目です。

②刑法に類似している科目であり、刑法が得意な受験生にとっては取り組みやすい科目といえます。行為要件及び効果要件の定義を示し,その要件に問題文の事実をあてはめて結論を導くことになります。ボリュームが少なく、比較的難易度は落ちるため必要な勉強量は少ないといえるでしょう。もっとも、下記のように優秀な学生が受験生として多いといわれていることから相対的に高評価を得るのは難しいと考えます。

③一橋大学法科大学院をはじめ優秀で、検察官を目指す受験生が多く選択する科目です。また独禁法を取り扱うような大きな法律事務所では需要がありますが、それ以外での需要は多いとはいえません。

④経済法は,当初はあまり選択者が多くはありませんでした。しかし、令和元年では789人(17.8%)として現在は2番手に位置するようになりました。ですので、受験仲間との情報共有がしやすいといえます。

(4)知的財産法 ★14個

①参考書・対策本等が充実しているか ★★★

②学習の範囲の広狭と学習量の軽重 ★★★

③将来の仕事での有用性 ★★★★

④選択者の人数 ★★★★ (令和元年は4位)

①参考書などの教材が豊富とはいえませんが、徐々に独自での学習環境が整ってきており基本的なテキストと判例百選などで対応可能です。。

②テキストの細部までの内容、主要な判例を横断的に理解することが必要です。特許法及び著作権法から1問ずつ出題されます。また、法改正が比較的頻繁にある分野なので、条文の内容を十分に理解しなければなりません。もっとも、民法・行政法・民訴法等に関連する論点も多く、これら科目の復習になります。とはいえ、総じて意識の高い受験生が多く、知的財産権に関する経験のある受験生もいることから試験難易度は高めと言われています。

③インターネットの発達によって、法律家が知財や特許を扱う機会は増えているため、今後高い需要が見込まれています。さらに2020年の感染症の問題からもオンラインでの学習、EC(電子商取引)がますます注目されており、需要が非常に高くなるといえます。また、音楽・映像のネット配信など時事関係が反映されることから比較的、飽きずに学習ができるといえるでしょう。もっとも、特許などを扱わない事務所では弁理士に任せることが多く、その専門知識に汎用性があるとはいえません。

④令和元年は597人(13.5%)の方が選択し,4番目に受験者が多い科目ですので比較的、情報共有がしやすいと言えます。

(5)労働法 ★16個

①参考書・対策本等が充実しているか ★★★★★

②学習の範囲の広狭と学習量の軽重 ★★

③将来の仕事での有用性 ★★★★

④選択者の人数 ★★★★★ (令和元年は1位)

①最多の選択者数であり、また公務員試験の試験科目であることから教材の充実度はトップクラスです。

②出題範囲は、労働基準法,労働契約法、労働組合法に大別されています。出題が広く、基本書及び百選掲載判例はよく理解しておく必要があることから勉強量は他の科目より多いです。暗記量の多さが学習量の増加に繋がっているといわれています。また受験生が最も多いこともあり、試験の問題のレベルは比較的高めです。

③一般民事・企業法務ともに役立つ科目です。2020年以降、雇用関係が悪化することは不可避と言われていることから、労働者側にも経営者側にも有益なアドバイスができるようになります。そのため合格後の仕事の幅は広いと言えます。もっとも、労働者側、経営者側のどちらかにつくと、その後の案件でも他方の側に立った依頼は少なくなるといわれています。利害関係が大きく対立することになるからハッキリと立場が分かれるようです。

④選択者は選択科目の中で一番多く令和元年は1,299人(29.3%)で1位でした。今後も1位の座は安泰といえますので、受験生同士の情報共有は非常にしやすいと言えます。

(6) 環境法 ★13個

①参考書・対策本等が充実しているか ★★★

②学習の範囲の広狭と学習量の軽重 ★★★★★

③将来の仕事での有用性 ★★★

④選択者の人数 ★★ (令和元年は7位)

①受験者が少ないので教材や講座が豊富とはいえません。もっとも、教材は基本書と判例百選,ケースブックで対応可能な科目です。

②出題範囲は環境訴訟と環境法政策の分野に大別されています。環境訴訟については訴訟類型の選択,個別法の解釈といった行政法の理解がそのまま活かせます。環境法政策については、考査委員の出版している著書で十分に対応可能です。また、民法の不法行為分野,行政法との関係が密接で、非常にお得な科目であると某考査委員が仰っていました。民法・行政法と大幅に重なるため、相乗効果が期待できることがメリットとして挙げられます。法改正が多くそのフォローを要しますが、試験問題自体はPPP(汚染者負担原則)などの理解を応用した制度設計を問う現場思考型のものが多く、勉強量自体は比較的暗記量は少なめです。他方、水質汚濁防止法、土壌汚染対策防止法などの個別法令の引用・理解といった条文重視な科目です。以上のように暗記量は少ないので、効率的な勉強ができれば少ない勉強量でも結果を出すことができるため魅力的な科目です。

③環境訴訟を視野に入れない限り、基本的には汎用性のある科目とは言えません。もっとも、国連が2016年に採択したSDGs「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」 は2030年までに海洋汚染、土壌汚染などの対応を193か国の国と地域に求めており、日本も批准しています。近年のレジ袋、プラスチックゴミ問題の対応など、環境法の理解を前提にした活躍の場が見込めるといえるでしょう。

④令和元年は256人( 5.8%)が受験した科目です。ですので、受験仲間との情報共有がしやすいとはいえません。

(7)国際関係法(公法系)★8個

①参考書・対策本等が充実しているか ★★

②学習の範囲の広狭と学習量の軽重 ★★★

③将来の仕事での有用性 ★★

④選択者の人数 ★ (令和元年は8位)

①予備校の対策本などがかなり少ないため基本テキストや判例の学習が中心になります。

②条約や国際判例の解釈が学習の中心になります。選択科目中最少であり高得点を狙える科目です。具体的には、条約や国際判例(勧告的意見、仲裁裁判判決等)の解釈がポイントになります。国際法の法源、国際法の主体、国家責任、管轄(海・空・宇宙),環境・経済・人権,紛争解決等がポイントになり、対象となる法も多く範囲も広範といえます。もっとも、理論的な成熟性の高い科目であり、国際政治・情勢に関心のある受験生には興味を持って取り組みやすい科目といえます。

③将来の有用性は未知数ですが、国連職員、外務省職員、グローバルな働き方を目指している場合には有用です。弁護士会の国際部などで国連絡みの仕事をしない限り、通常の弁護士は触れる機会は少ないです。

④令和元年は受験人数が最も少ない59人( 1.3%)ですので、受験仲間との情報共有やゼミ等を組むことはほぼ難しいでしょう。

(8)国際関係法(私法系) ★11個

①参考書・対策本等が充実しているか ★★

②学習の範囲の広狭と学習量の軽重 ★★★

③将来の仕事での有用性 ★★★

④選択者の人数 ★★★ (令和元年は5位)

①基本書は比較的豊富ですが演習所などの教材は少ないです。

②条文数が少なく勉強の負担は比較的軽い科目といえます。範囲は、国際私法・国際民事訴訟法・国際取引法の分野に分かれています。かなり負担が大きそうですが、出題される分野はほぼ決まっているため、勉強しやすく、覚えるべき知識は少ないメリットがあります。標準的な勉強量で済むため総合的にみて学習しやすい科目といえます。

③渉外案件を取り扱う事務所はもちろん、最近では、一般民事の分野でも、家族関係等を中心に触れる機会が増えてきています。グローバル化に伴い、国際結婚が増えてますので、グローバルな場で活躍したい人は選ぶべき科目だと思います。

④令和元年は受験人数が492人(11.1%)ですので、受験仲間との情報共有やゼミ等を組むことは通常といえます。

■結果発表

倒 産 法  ★14個 ☆1位 労 働 法
租 税 法 ★16個 ☆1位 租 税 法
経 済 法 ★13個 ☆3位 倒 産 法
知的財産法 ★14個 ☆3位 知的財産法
労 働 法 ★16個 ☆6位 経 済 法
環 境 法 ★13個 ☆6位 環 境 法
国際関係法(公法系)★8個 ☆7位 国際関係法(私法系)
国際関係法(私法系)★11個 ☆8位 国際関係法(公法系)

ランキングは上記の通りになりました。※なお、本ランキングは筆者の独断と偏見になりますのでご理解の程宜しくお願い致します。

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如何でしたでしょうか。

学習・試験の難易度以上に、今後の将来性といった項目を重視しています。世界的な感染症の被害により、世界・日本経済をはじめ様々な分野での痛打は避けられないからです。

法曹になるにしろ他の分野にいくにしても選択科目で専門的に学んだことは必ず受験生の皆さまの実力になります。

司法試験・予備試験の延期という未曽有の危機ですが、粛々と学習を行い、合格を勝ち取って頂きたいと思います。

司法試験・予備試験講師 

宮崎 貴博

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